NPO法人キャンサーネットジャパン > FAQs > 血液がん > Q104:1年2ヶ月前に造血幹細胞移植受け、現在毎日免疫抑制剤(ネオーラル)50mg服用しています。1年経ちましたが、今から コロナワクチン接種をしても抗体はできないのでしょうか。
40代・成人T細胞白血病・福岡県

Q.104

1年2ヶ月前に造血幹細胞移植受け、現在毎日免疫抑制剤(ネオーラル)50mg服用しています。 1年経ち、同量のネオーラル服用時に主治医にコロナワクチン接種を打診して断られましたが、今回は不活性化ワクチン接種の許可が下りました。 ただ、接種したところで抗体が出来るのか分からないとも言われました。 オミクロンが身近に迫っているので1回でも接種し、重症化を防ぎたいと思ってますが、打っても抗体もできず意味ないものでしょうか?。最新の免疫抑制剤下でのワクチン接種のデータを教えていただきたいです。

(患者・40代・成人T細胞白血病・福岡県)

A.

造血幹細胞移植後患者へのCOVID-19ワクチンの有効性については、海外から複数の報告が出ています。

どちらかというと免疫抑制剤を内服していない方を中心とした報告ですが、概ね70-80%の方で抗体が陽性化し、感染抑制および重症化抑制の効果があると考えられています。 一方肝臓移植や腎臓移植など、臓器移植後患者での検討では、免疫抑制剤を内服している方が対象となります。

セルセプトなどの代謝拮抗薬を併用している方では抗体陽性化率は低い(40%弱)ものの、カルシニューリン阻害剤の(ネオーラル、プログラフ)のみ内服している方では約60%の方が抗体陽性となっています。 これらはいずれも一般の方での抗体陽性化率(80-90%)と比べると低いですが、決して無効ではないと考えられます。

ここから先のデータはありませんが、さらに3回目のブースト接種まで受けることができれば、抗体陽性化率はさらに上昇すると見込まれます。 ただ一口に抗体陽性化といっても、それがどこまで感染や重症化を抑制するかは個々人で異なり、よく分かっていません。 また造血幹細胞移植の場合、移植片対宿主病(GVHD)を併発していれば免疫の不安定さゆえワクチンの有効性も低下すると見込まれます。 すなわち陽性化率を個々人で正確に予測することは困難です。 COVID-19の現在の流行状況に鑑み、ワクチン接種の副反応というリスクとCOVID-19感染予防というベネフィットを天秤にかけたとき、総合的には接種されることが推奨されます。

2022.2.4