そもそもセックスは必要?

自分とパートナーの考え次第

セックスが必要かどうかは、自分とパートナーがどう考えているかによって異なります。ただ、病気になる前から性生活に関してオープンに語り合う関係ではなかった場合には、パートナーが本当はセックスしたいと考えているのか分からない場合もあるのではないでしょうか。

キャンサーネットジャパンが、がんの患者とそのパートナーを対象に2021年に実施した調査には、「性欲がわかないので適当にあしらっているが、パートナーが我慢しているとしたら申し訳ないと思う」という声も寄せられました。一方、「もともとセックスレスで夫婦仲はよいので不満はない」という回答も多くありました。

がんのサバイバーの女性の中には、「病気になってパートナーに迷惑をかけている」「相手に悪い」という気持ちから、身体的・精神的につらい時期でもセックスに応じている場合があるようですが、我慢して応じる必要はありません。セックスをするかどうかは、そのときの体や心の状態によって、本来は、カップルで話し合って判断すべきものではないでしょうか。

セックスは心地よい身体的コミュニケーション

ただ、気持ちが回復してきたり、逆に非常に重い現実を突きつけられてつらい気持ちになったりしたときに、パートナーとセクシュアル・コンタクトをしたいという気持ちが湧いてくるのは、自然なことです。セックスは相手に強制されてするものであってはなりませんが、セックスを含むスキンシップは、パートナーとの関係を深め、心地よい時間を持つために必要な身体的コミュニケーションです。病気になったからといって性生活を諦めたり、我慢したり、恥ずかしいと思う必要はありません。

「手当て」という言葉があるように、人は信頼できる相手に触られたり抱擁されたりすると気持ちが落ち着き癒されます。セクシャル・コンタクトではありませんが、手で背中などをさするマッサージが、がんの痛みや不安の軽減につながるという研究報告もあるくらいです。その相手が、信頼できるパートナーであればリラックス度も高まり、病気のことを忘れさせてくれる時間になるかもしれません。がんの治療中、治療後も、パートナーとのスキンシップやセクシュアル・コンタクトは、コミュニケーションを深め気持ちを落ち着かせる手段の一つになります。

参考資料

・認定NPO 法人キャンサーネットジャパン「がん経験者の性生活への影響の評価とセクシュアリティ支援ツールの開発」アンケート調査(2021年1月8日~2月14日、がん経験者とそのパートナーを対象にインターネットで実施)
・Integr Cancer Ther; 14(4):297-303.2015