がん治療中・治療直後の避妊法

コンドームの使用法

がんの薬物療法、放射線療法を受けている時期、あるいはその直後に本人、あるいはパートナーが妊娠すると、赤ちゃんに影響がある可能性があるので、セックスをするときには避妊をすることが大切です。望まない時期の妊娠を避けるために、確実な避妊法について知っておきましょう。

最も手軽で、既婚、未婚に関わらず日本人の多くが使っている避妊法は、男性用コンドームの使用です。男性用コンドームを使用することで、パートナーへの薬物の曝露を防ぐこともできます。男性用コンドームは、サイズが合ったものを勃起したらすぐに装着し、射精したら精液が女性器の中でもれないように気を付けながら外すのが正しい使い方です。コンドームを使ったとしても途中で破れたり、射精するときだけ装着したり、外すときに女性の性器の中に精液が漏れたりしたら妊娠する可能性があります。また、射精前に精液が腟内で漏れ出る可能性があるので、腟外射精は妊娠の可能性が意外と高く、確実な避妊法とは言えません。

女性の避妊法

女性の主な避妊法には、低用量ピルの使用と、子宮内黄体ホルモン放出システムIUSを装着する方法があります。低用量ピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を配合した内服薬で、服用中は卵胞の発育が止まり排卵はなくなります。月経痛など月経困難症の治療薬として使われる場合には、保険適用になります。ただし、乳がんや脳卒中の既往歴がある人、35歳以上で1日15本以上の喫煙者、前兆のある片頭痛持ちの人、妊娠直後・授乳中の人は低用量ピルが使えません。がんの患者が低用量ピルを使っても大丈夫かは、担当医に相談しましょう。

一方、IUSは、黄体ホルモンを放出して子宮内膜の増殖を抑えるT字型の器具です。産婦人科で子宮内に挿入してもらう必要がありますが、一度入れれば通常は5年間避妊効果を発揮します。出産経験のない人の場合には、子宮内に挿入する際に痛みを感じることがあるので、しばらく出産する予定のない経産婦に向いた避妊法とされます。低用量ピルやIUSを使っている場合でも、性感染症を防ぐためには男性がコンドームを装着することが大切です。がんの薬物療法中は普段よりも感染症になりやすい状態になっている可能性があるので、女性が低用量ピルやIUSによる避妊をしているとしても、男性は勃起したらすぐにコンドームを付けるようにしましょう。なお、感染症を避けるためにも、がんの治療中のオーラルセックスは控えましょう。

セックスのときにコンドームが破れたなど、低用量ピルやIUSを使っていない女性が、「妊娠したかもしれない」と思ったときには、72時間以内に緊急避妊薬のレボノルゲストレル(商品名・ノルレボ錠、レボノルゲストレル錠「F」)を服用する方法もあります。緊急避妊薬に関しては市販化が検討されていますが、現在(2023年3月)は医師の処方を受けなければ入手できない薬です。できるだけ早く産婦人科などを受診し、緊急避妊薬を服用したほうが、妊娠率は低くなります。がんの薬物療法を行っている際には医師に使用している薬の内容を伝えましょう