LGBTQ+/SOGIE:医療機関に求められる対応

医療機関では、もともと性別を確認するのが当然になっている場面であっても、出生時に割り当てられた性別を確認する必要が本当にあるのかどうか見直しが必要です。問診票や同意書は、患者が医療機関に個人情報を開示するものですが、これらの書類の性別欄が「男・女」となっているだけで、「この医療機関には自分のセクシュアリティの問題を相談したり開示したりできない」と思われてしまう可能性があります。問診票や同意書の性別欄は、「女・男・(自由記載)あるいは、その他」のように、女・男以外の記載ができるようにしておくことが望ましいですし、患者を呼ぶときには、プライバシーに配慮する意味でも番号制にするとよいでしょう。

パートナーの有無を確認する必要があるときには、「結婚していますか?」ではなく、「一緒に住んでいる人はいますか?」「パートナーはいますか?」と質問するとLGBTQ+や事実婚の人も含め誰でも回答しやすくなります。がんの診断・治療のために過去と現在の性交渉歴を確認する際にも、異性との性交渉のみを前提にせず、パートナーとの性交渉歴を確認しましょう。デリケートな問題であり変に詮索するのではなく、最初にパートナーの有無や性交渉歴について聞いてもよいか確認し、同意が得られたら医療従事者として、診断・治療に必要な項目だけにポイントを絞り、態度や表情にも気を付けつつ聞くことが大事です。

さらに、同性のパートナーや友人への病状説明、同意書へのサイン、危篤などになったときの面会などを認めるか、医療機関全体での方針を決めておく必要があります。基本的には、患者本人の希望に沿った対応が求められますが、患者本人の意識がなく、パートナーの存在を知らされていないときには、自治体や民間団体が発行した「パートナーシップ証明書」、本人が持っている「緊急連絡先及び医療情報提供カード」などを基準に判断する医療機関が増えているようです。そもそも一般的には、異性の配偶者が面会したり同意書にサインしたりするために、戸籍の提示を求めたりしないわけですから、同性のカップルにだけ証明書を求めるというのもおかしな話なのかもしれません。

検査や入院のときに身に着ける院内着、病衣に関しては、出生時に割り当てられた性別が女性の場合はピンク、男性は青などと勝手に色分けすると違和感を持つ人もいます。院内着、病衣は一色に統一するか、自分で色を選択できるようにするとよいでしょう。

それから、出生時に割り当てられた性別で分けられた病室、更衣室、トイレの利用にも配慮が必要です。トイレや更衣室に関しては、性別に関わらず車椅子の人や高齢者、乳幼児も含め、誰でも使えることを表示した個室を設置すると、見た目と性自認が異なる人も含め、誰でも使いやすくなります。LGBTQ+の象徴となっている6色のレインボーカラーのシールなどを誰でも使えるトイレや更衣室などに貼る方法もあります。ただ、誰でもトイレやレインボーカラーのシールのついたトイレや更衣室へ入ることでトランスジェンダーだと分かってしまうのではないかと懸念する人もいます。性の多様性への対応が進んだ英国では、トイレや更衣室を性別で分けずすべて個室にするケースが増えています。可能なら、日本の医療機関でもそういった対応を検討するとよいでしょう。

 

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