小児がんと妊孕性~女の子編~
小児がんの治療成績は、ここ10~20年の間に大きく改善しています。治療成績の向上と共に問題になっているのが、強力な薬物療法、放射線治療、手術といった治療によって卵巣機能がダメージを受け、将来的に妊娠・出産ができなくなるなどの晩期障害です。小児がんで将来妊孕性(妊娠できる可能性)が低下するリスクの高い治療を受けるときには、治療開始前に、妊孕性温存療法を受けるかどうか、考えることが重要です。発達過程にある子どもであっても自分の体や将来に関わることであり、がんの治療の内容や妊孕性温存療法については、親の意向だけで判断せず、年齢に応じてわかりやすく説明したうえで本人の希望に沿って選択する必要があります。
妊孕性温存療法に関しては、小児がんの女児の場合、月経があるかどうかで選択肢は変わります。月経のある女児の場合には、卵子凍結保存と卵巣組織凍結保存の2つの選択肢があります。排卵誘発を行い採卵して卵子を凍結する時間的な猶予があるときには卵子凍結、時間的な猶予がないときには卵巣組織凍結が勧められます。まだ初経を迎えていない女児の場合には、卵巣組織凍結を行うかどうかを検討します。
我が子が小児がんと言われて戸惑っているときに、妊孕性温存療法のことまで選択するのは本人や親にとっては大きな負担ですが、「卵子や卵巣を凍結することで将来のことを考えられるようになった」という患者もいます。治療が開始される前に、がん治療医や生殖医療医、看護師、臨床心理士(公認心理師)、ソーシャルワーカーなどに相談しながら、妊孕性温存療法を受けることについて話し合いましょう。
なお、小児がんの治療後は、月経がなかなか来なかったり、無月経になったり、40歳より前に閉経を迎える早発閉経になったり、逆に、ホルモンの異常で8歳より前に乳房が発達したり月経が始まるなど思春期早発症になったりするなど、月経の異常や妊孕性低下を来す晩期障害に直面することがあります。ホルモン療法などの治療ができる場合もありますので、月経の異常などは放置せず、フォローアップしてくれるがん治療医、あるいは婦人科医などに相談し、早めに対処するようにしましょう。
妊孕性温存療法~女性編 参照
参考サイト
日本がん・生殖医療学会