大切な人に拒絶されてしまうかも?という不安と向き合う~パートナー編~
大切なパートナーががんと告げられたら…?患者さん本人だけでなく、あなたにとってもショックは大きなものでしょう。がんの治療や治療に伴う心身の変化に戸惑う患者さんの傍らで、無力感にさいなまされることもあるかもしれません。患者さんのからだの変化をあなたも受け入れることができず、戸惑ってしまうこともあるでしょう。患者さん自身は自分の変化を受け入れて、ありのままの自分を受け止めてほしいと願っているにも関わらず、あなたのほうが受け入れることに時間を必要とすることもあるかもしれません。あなたまでがネガティブな感情にとらわれてしまったり、性的な気持ちになれなかったりすることも考えられます。患者さんを大切に思っていることを伝えた上で、あなたの不安や戸惑い、時間がほしいことを語り合う時間を持つことができたら、ボタンのかけ違いが解消されるかもしれません。
もし拒まれてしまったとしても…
一方で、セックスに誘って拒まれてしまったら、相手ががんというライフイベントの最中にあることを頭ではわかっていても、こころがついていかないこともあるでしょう。セックスを拒まれるということは、ときには自分自身を拒絶されたような気持ちになってしまうものです。また、以前のようにセックスをしたいと思っていても、いつからセックスが可能なのか、そもそもセックスをしたいなんて言ってよいものか、相手のことを思うばかりに言い出せず、一人悶々と抱え込んでしまうこともあるでしょう。確かに、まだそんな気持ちになれないでいる患者さんにとって、タイミング悪く求められるセックスは、パートナーへの不快感や不信感につながりかねないだろうことは頭の片隅に入れておいたほうがよさそうです。しかし、患者さんがいまどのようなからだの状態なのか、セックスをしたいと思える心境なのか、相手のことをいたわりながら、あなたの正直な気持ちを伝えてみることは大切なことです。患者さんは患者さんで、セックスにまつわるいろいろな不安や悩みを抱えているかもしれませんし、治療の段階ごとにこころやからだの状態は変わっていくものです。それに、「パートナーに拒まれたらどうしよう?」という不安は、案外お互いに共通しているものかもしれません。もし拒まれたとしても、その背景にあるものを探ってほしいと思います。
中には、セックスを始め、結婚や妊娠・出産も含めた将来への不安や配慮などから、別れを切り出す患者さんもいるかもしれません。しかし、決して本心とは限りません。セックスという大事な人間の営みに関わる話だからこそ、本音で語り合いたいものです。以心伝心という言葉もありますが、きちんと言葉にして、伝えようとしなければ、伝わらないことはたくさんあります。言葉にしなければ、気が付けないことも少なくありません。大切な人とこころもからだもすれ違ってしまわないように、言葉にして伝える一歩を踏み出してみてください。