セックスセラピーってどんなの?
深刻な悩みがあると、比較的気軽に精神的なセラピーを受ける人が多い米国。性の問題を専門にするセックス・セラピストもいます。愛し合ってパートナーになっても、なにかのきっかけで関係にひびが入ったり、身体的状況が変化して、性生活に影響することも。でも問題が性にかかわることだと、米国であっても、なかなか他人には話にくいようです。
身体的状況の変化には、男性の勃起不全や前立腺肥大、早漏、女性の性欲減退などから、がん治療によるものなど様々な状況が含まれます。北米性機能学会(SMSNA)では、医療研究者がそうした問題に取り組んでいます。前立腺がん治療などの影響で勃起不全がおきても、今では勃起反応を高める経口薬がありますし、女性の膣狭窄や乾燥でも膣拡張器を使ってリハビリしたり、適切な潤滑剤を使うことで改善します。
一方で、がん治療の後でボディイメージの変化から自信をなくしてしまった、性交痛を感じそうで不安、パートナーにどうしてほしいかを伝えにくいといった心理的な問題に対しては、セックス・セラピストに相談すると良いかもしれません。セックス・セラピーは対話によるカウンセリングです。米国では1964年に産婦人科医のWilliam Masters博士と、心理学者のVirginia E. Jonsonさんが性科学研究所を設立し、人間の性的反応や性機能不全の治療法などの研究をはじめ、時代と共にセックス・セラピーも進化してきました。
セックス・セラピストは、解剖学的側面を含んだ性交およびセクシャリティについて説明し、パートナーと性について話し合いができるよう支援します。またお互いの性的満足が改善するような戦略やテクニックを助言したり、過去のネガティブな性的経験あるいはトラウマへをのりこえるための支援をしたりもします。
セラピストは心理学者、医師、ソーシャルワーカーなどです 。性的な問題へのカウンセリングで専門的な訓練を受けていますが、デリケートな問題なので自分が安心して話せると感じるセラピストを選ぶことが大切です。自分だけでカウンセリングを受ける人もいますし、パートナーと一緒に受ける場合もあります。
セックス・セラピストとの話し合いでは、パートナーとの関係や性に対する知識や考え方など、個人的なことも聞かれるでしょう。カウンセリングは「何でも話せる安全な場所」ですが、最初は話しにくいかもしれません。あせる必要はありませんし、どうしても話にくいと感じた場合は、セラピストを変えてみても良いかもしれません。
パートナーとじゃれ合うような非性的接触から性的な接触へと、少しづつ親密度と信頼感を高めていく感覚集中法(センセート・フォーカス法)のほか、最近では「マインドフルネス」を使って、性交ではその時の心地よさだけに気持ちを集中するテクニックなどもあります。
こうした心理セラピーはすぐに結果がでないかもしれませんが、専門カウンセリングを受けながら自分の気持ちを見つめ直し、パートナーとの対話を深めていく中で、生活の質を改善していけるかもしれません。
参考リンク
SMSNA – What is Sex Therapy Like?
(北米性機能学会の患者向けサイトのブログ)
翻訳・執筆 片瀬ケイ(一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ:JAMT)