はじめに
がんと心のケア
もし、あなたやご家族の誰かががんにかかったら、あなたの心はどんな感情を経験するでしょうか。がんは患者さんとご家族に身体的、精神的、あるいは経済的な負担を強いる病気であることは確かです。精神的な負担が高じると、がん治療に必要な意思決定ができなくなる、日常生活の質が下がるなどの思わぬ障害が生まれます。このため最近は、「がんが心に及ぼす影響と、心ががんに及ぼす影響」について対処する「精神腫瘍科(サイコオンコロジー)」の医師や、に所属する精神科医が患者さんとご家族の心のケアを行うケースが増えてきました。
精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)や精神科医、、はいずれも心の専門家です。少しでも不安に思うことがあれば、ぜひ、主治医に相談して心の専門家を紹介してもらってください。次のページからは、がん患者さんが向き合う不安な気持ちや悩みの解決策について解説していきます。
参考資料
- 明智龍男:がんとこころのケア,pp.12-14,日本放送出版協会,東京,2003
- 大西秀樹:がん医療における精神腫瘍学的な問題とその対応について 精神神経薬理 11:761-767,2008
- 大西秀樹:がん患者の心を救う―精神腫瘍医の現場から,pp.12-16,河出書房新社,東京,2008
緩和ケアチーム/かんわけあちーむ
がんの分野において「緩和ケア」とは、がん患者の療養生活の質(QOL;quality of life)の向上を目指し、がんの痛みなどの身体的苦痛、不安や抑うつなどの精神的・心理的苦痛、これからの生活や人生に対する悩みや怖れなどの社会的苦痛・経済的苦痛・スピリチュアルペインといった様々なつらさを和らげることをいい、これらを行う専門家チームのことを「緩和ケアチーム」という。身体的苦痛を和らげる緩和ケア医、心の専門家である精神科医、心療内科医、緩和ケアの経験のある看護師や薬剤師が核となり、必要に応じてソーシャルワーカーなどが加わる。がん診療連携拠点病院では緩和ケア病棟もしくは緩和ケアチームを設置している。
心療内科医/しんりょうないかい
強いストレスを受けた影響が、めまいや耳鳴り、胃の痛みや吐き気などの身体の症状として現れる「心身症」を診る医師のこと。臓器別に分かれた診療科とは違い、身体と心、そして家庭・社会生活が全体がより良い方向に向かうよう、薬物療法と並んでカウンセリングなどの精神療法も行う。
参考:日本心療内科学会、日本心身医学会HPより一部抜粋、改変
臨床心理士/りんしょうしんりし
財団法人・日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格を持つ心理士を指す1)。傾聴や共感などの支持的精神療法や、否定的な思考のゆがみを修正する認知行動療法などで「こころ」の問題にアプローチする専門家。診断や薬の処方はしない2)。
参考:1)日本臨床心理士資格認定協会HP
2)小早川誠 第Ⅳ章緩和ケア3. 緩和ケアチーム.:専門医のための精神科臨床リュミエール24. サイコオンコロジー,大西秀樹責任編集,pp.177-188,中山書店,東京,2010