認知行動療法
考え方のクセを直し、希望や可能性を見つけられる考え方を育てます
認知行動療法とは、つらい気分や不安を生み出す「考え方のクセ」や「思いこみ」を見直して、もっとやわらかい考え方を育み、厳しい現実のなかでも希望や可能性を見いだすことでつらい気分を和らげる方法です。例えば、がんの再発を告げられたとしましょう。過去の経験や知識からあなたはとっさに「明日にでも死んでしまうかもしれない、家族に申しわけない」と考え、不安と恐怖に落ち入るかもしれません。でも、それは本当のことでしょうか?少なくともこの時点では「再発」という事実があるだけです。治療の可能性や希望はまだまだあります。認知行動療法の第一ステップは、不安や抑うつ気分を引きだした思いこみを書きだしてみること。上の例では「がんで死んでしまい、家族に迷惑をかけるに違いない」です。次のステップは、それが事実なのかどうか、その考えはあなたにメリット(幸福や健康)をもたらすのか、もし友達に相談されたら自分はなんと答えるだろう、などいくつかの視点から見直し、最初の考えのとなりに、より柔軟で合理的な考え方を書きだしていきます。
その結果、「私は再発がんで死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。試す価値のある治療方法はたくさんある。家族が迷惑に思うとは限らないし、一緒に過ごす時間を大切にしていこう」といった、少し違う考え方があることに気づくと思います。認知行動療法では、心の専門家と30分程度の面接を16-20回行うなかで*)、「考え方のクセ」や「思いこみ」など偏った考え方をバランスの良い考え方へと変える方法を学ぶことができます。
*状態によっては心の専門家と相談のうえ回数を変更することも可能
参考資料
- 第47回 日本癌治療学会学術集会 Educational Book 44(3):pp1235-1241,2009.
- 大西秀樹ほか:がん患者への精神療法. 緩和医療学 7:pp36-42,2005.
- デビット D. バーンズ著:フィーリングGood ハンドブック,野村総一郎監訳,星和書店,2005.
- 平成19~21年度厚生労働科学研究「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」報告書,2010
- 大野裕:こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳,創元社,大阪,2003