すい臓がんの再発・転移
Q.再発・転移とはどのような状態になることですか
A.治療によって一度はみえなくなったがんがまた出現することを再発、がんがすい臓周囲のリンパ節やほかの臓器へ広がることを転移といいます。
社会的なサポートも活用しながら治療やケアを受けることが大切です。
再発とは、手術で取りきれたようにみえたがんが、目にみえない状態で体のどこかに残っており、再びすい臓やほかの臓器に出現した状態です。転移は、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗ってほかの臓器へ広がり増殖することです。
すい臓は消化器系の臓器、重要な動脈やリンパ節に囲まれているため、がんが再発・転移しやすい傾向があります。特に転移が多いのが肝臓、腹膜、肺、リンパ節、骨などです。
再発・転移したすい臓がんの治療は薬物療法が中心になります。術後化学療法としてS-1を服用中か終了直後に再発・転移したときには、すい臓がんの薬物療法で取り上げた1次治療のうち、①②③のどれかに切り替えます。
術後化学療法が終わってから長期間経っているときには、①~④の中から、体力、病状、本人の希望などによって適切な治療を選択します。2次治療以降は、「すい臓がんの薬物療法 ほかの臓器に転移がある人の2次治療」と同様です。
少ない数の転移(オリゴ転移)で進行が遅い場合、経過によっては再度切除が行われることがあります。どのような場合に切除が可能か定まっていませんので、担当医とよく相談し、場合によっては専門施設でセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。
膵神経内分泌腫瘍(悪性度の低いもの)が再発・転移し、切除が難しい場合には、オクトレオチド、ランレオチド、エベロリムス、スニチニブ、あるいはストレプトゾシンで治療します。
痛み、黄疸、十二指腸の閉塞などの症状が出たときには症状を軽減する治療を行います(すい臓がんの痛み、黄疸、栄養障害改善)。つらい気持ち、不安、痛み、不快な症状は我慢したり、一人で抱え込んだりせずに、担当医や看護師、ソーシャルワーカーなどに伝えましょう。
できるだけ長く自分らしい生活が続けられるように、担当医と相談し、納得して治療を受けることが大切です。
在宅医療・ケアを受けるには
在宅医療・ケアとは、住み慣れた自宅(またはそれに代わるサービス付き高齢者住宅など)で生活しながら、必要に応じて医療やケアを受けることです。
在宅医療・ケアを受けるには、訪問診療をしてくれる在宅療養支援診療所や訪問看護ステーションを探し、ベッドの貸与といった必要なサービスが受けられるように介護保険の申請をするなど、準備が必要です。高齢者でなくても40歳以上であれば、がんで介護が必要な状態だと認められれば、介護保険を使ってベッドや車椅子の貸与、介護サービス、入浴サービスなどが受けられます。
介護保険の申請の仕方については、まずは、かかっている病院のソーシャルワーカーや近隣のがん診療連携拠点病院のがん相談支援センター、最寄りの地域包括支援センターで相談してみましょう。
一人暮らしで本人や家族が在宅医療・ケアは無理だと考えていても、さまざまな専門職のサポートを受ければ不安も解消し、自宅での生活が続けられるケースが少なくありません。
患者支援団体による電話相談、メール相談も
患者支援団体のパンキャンジャパンでは、全国のすい臓がんの患者さんや家族をサポートするために、全国7か所の支部(アフィエリエート)において勉強会等の開催をしております。また本部では、賛助会員向けに電話相談、メール相談によるPALS(Patients And Liaison Service:パルズ)の活動・サポートを行っています。
●詳しくは、http://www.pancan.jp
参考資料
もっと知ってほしいすい臓がんのこと 2023年版,pp.18