すい臓がんの化学放射線療法
Q.化学放射線療法はどのような治療法ですか
A.化学放射線療法は抗がん薬と放射線照射を併用してがんの制御を目指す方法です。
切除可能境界、または切除不能と診断されたとき、あるいは、Ⅲ期の局所進行がんでは化学放射線療法も選択肢の1つになります。
Ⅱ期かⅢ期で切除可能境界と診断された場合で、がんはすい臓とその周囲のリンパ節にとどまっているけれども、手術でがんを取り除くことが難しい局所進行すい臓がんでは、化学放射線療法か薬物療法(化学療法)のどちらかを選ぶことになります。
すい臓がんの化学放射線療法では、S-1や5-FUといったフッ化ピリミジン系抗がん剤、またはゲムシタビンと、体の外からの放射線照射を併用します。
放射線療法は病変とその周囲に放射線を照射し、がん細胞を死滅させる治療法です。痛みや熱さを感じることはありません。化学放射線療法は一般的に通院治療で実施されます。
化学放射線療法にはいくつか方法がありますが、S-1との併用療法では、1日1.8~2グレイ(Gy:放射線量の単位)の放射線を25~28回、合計約50グレイ程度照射します。S-1は放射線照射中、土日を除いた毎日2回、40~60mg/回服用します。
ゲムシタビンとの併用療法では、放射線1日1.8グレイまたは2グレイずつ合計45~54グレイ照射し、少量(250~600mg/㎡)のゲムシタビンを週1回併用します。
放射線療法に関しては、従来からあるX線の3次元原体照射だけではなく、綿密な治療計画によってX線照射の強さを変える強度変調放射線治療(IMRT)、水素原子核を用いた陽子線治療、炭素原子核を用いた重粒子線治療などの高精度放射線治療も保険適用になっています※1。
たとえば、重粒子線治療では12回に分けて合計43.2~55.2グレイ照射します。高精度放射線治療を受けられる病院※2は限られますが、患部に強い放射線を集約的に照射し、周囲の組織への有害事象を減らせるメリットがあります。
※1 2022年4月より手術による根治的な治療が困難な「局所進行性膵癌」の陽子線治療、重粒子線治療が保険適用になりました。
※2 全国の重粒子線・陽子線施設(https://www.antm.or.jp/05_treatment/04.html)
放射線を12回、25回などに分けて、少しずつ照射するのは、正常細胞への影響を最小限にしつつ、がんを芯までたたくためです。
放射線療法の副作用には、胃や小腸からの出血、吐き気、下痢、倦怠感、食欲低下などがあります。副作用がひどくなったときには放射線療法を中止します。
すい臓がんではがんの原発巣や骨転移などの転移巣に痛みが出現することがあり、その軽減を目的として放射線療法を行うこともあります。
参考資料
もっと知ってほしいすい臓がんのこと 2023年版,pp.16