すい臓がんとは
Q.すい臓がんはどのような病気ですか
A.すい臓がんは、食べ物の消化を助ける膵液が通る膵管の細胞に発生するがんです。
すい臓にできるがんには、ほかに膵神経内分泌腫瘍(膵神経内分泌がん)などがあります。
すい臓は、みぞおちの少し下、胃の後ろ側にあり、洋ナシのような形をした長さ15~18cm、横幅3~5cm、厚さ2~3cm程度の臓器です。
すい臓は、①炭水化物、脂肪やたんぱく質を分解する消化酵素を含む膵液(すいえき)を分泌する(外分泌)、②血糖値を調節するインスリン、グルカゴンなどのホルモンを産出する(内分泌)といった2つの重要な役割を担っています。
わが国では年間約4万人を超える人がすい臓がんになり、年々患者数が増加しています。50歳以上に多く、性別にかかわらず発症しますが、やや男性に多い傾向があります。
●膵管がん
すい臓にできる腫瘍の約90%は、すい臓の中を茎のように通っている膵管(すいかん)の上皮内細胞の中から発生する膵管がんです。すい臓の腺房細胞(せんぼうさいぼう)から分泌された膵液は膵管を通って主膵管に集まります。
主膵管は十二指腸乳頭部で胆汁を運ぶ胆管と合流し、ともに十二指腸に流れ込みます。がんになると膵管の拡張がみられます。すい臓は、十二指腸に隣接した膵頭部(すいとうぶ)、少し細くなった膵尾部(すいびぶ)、その間の膵体部(すいたいぶ)の3つに分けられます(図表1)。
膵頭部には、脂肪の分解を助ける胆汁を肝臓から十二指腸へ送る胆管が通っています。膵管にできたがんが広がって胆管が狭くなると、眼球や皮膚が黄色くなる黄疸を発症しやすくなります。
すい臓は肝臓、十二指腸、胃といった臓器に取り囲まれていて、体の最も深いところにあるため、がんがみつかりにくく、周囲のリンパ節や血管、隣接する臓器に転移しやすい特徴があります。膵管がんは初期の段階では症状がなく、腹痛、胃のあたりや背中が重苦しい、食欲不振、下痢気味、黄疸、糖尿病の悪化など、症状が出た段階でみつかることが多くなっています。
●膵神経内分泌腫瘍
すい臓の中には、血糖値などを調整するホルモンを分泌する細胞のかたまりである「ランゲルハンス島」が点在しています。すい臓がんの2~3%は、膵神経内分泌腫瘍で、小児から高齢者まであらゆる年代に発生するのが特徴です。
神経内分泌腫瘍は、悪性度の低い神経内分泌腫瘍と悪性度が高く進行の早い神経内分泌がんの2つに分けられます。悪性度の低い神経内分泌腫瘍は、比較的進行が遅く治りやすいがんです。
神経内分泌腫瘍では、過剰にホルモンが産出される症状が出る場合があります。インスリンを過剰に産出するタイプのインスリノーマでは、低血糖になり意識がもうろうとすることがあります。胃酸が過剰に分泌されるタイプの神経内分泌腫瘍はガストリノーマと呼ばれます。
神経内分泌腫瘍の場合は、症状があっても必ずしも進行しているわけではなく、自覚症状が早期発見のきっかけになります。
参考資料
もっと知ってほしいすい臓がんのこと 2023年版,pp.4