NPO法人キャンサーネットジャパン > がん情報 > 卵巣がん > 卵巣がん治療

卵巣がん治療

Q.卵巣がんでは、どのような治療が行われますか

A.どの進行期においても、多くの場合、まず手術を行い、できるだけがんを切除します。
 その後、進行期に応じて薬物療法を追加するのが基本です。


●標準化された治療法が確立されている

 卵巣がんの治療は、日本婦人科腫瘍学会が作成した「卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン」によって標準化されています(図表7)。

卵巣がん治療の基本的な流れ(妊娠を希望しないケース。年齢や進行期によって治療は異なる)

 このガイドラインによると、卵巣がんが疑われる場合、どの進行期においても多くの場合、最初に手術が行われます。卵巣腫瘍が良性なのか悪性なのかを調べるためには手術で摘出した腫瘍を病理検査しなければ確実に判定できないからです。

 手術中に行われる術中迅速病理検査と腹水細胞診による判定の結果、良性の場合は腫瘍が発症した卵巣を切除して手術は終了します。境界悪性と悪性の場合は両側の卵巣と子宮を摘出し、卵巣がんの広がり(播種)が最も起こりやすい大網(胃から垂れ下がり、おなかの臓器を覆っている網のような脂肪組織)を切除します(図表8)。

 なお、通常は後腹膜リンパ節も切除されます。ただし合併症があったり、ほかに腫瘍が残存していたりする場合などでは行いません。

 手術をした時点でおなかの中にがんが散らばっている(腹膜播種)ときは、がんをできるだけ摘出する腫瘍減量術が行われます。卵巣がんはがんの取り残しが少なければ少ないほど予後がよいことがわかっています。また、手術後に行う薬物療法もより効きやすくなるといわれています。

卵巣がんの手術

●手術後に薬物療法を実施するのが基本

 卵巣がんはこのような手術を行った後に薬物療法を追加するのが標準的な治療です。ⅠA期・ⅠB期の低異型度がんの場合は経過観察となりますが、それ以外の場合は薬物療法を行うことになります。(卵巣がんの薬物療法)。
 おなかの中にがんが散らばっていて、手術での取り残しが予測されるような場合は、手術前に抗がん剤を投与し、がんを小さくする術前化学療法も最近は多く行われています。術前化学療法を選択する場合でも組織型の確認等のために小切開もしくは腹腔鏡で腹腔内を観察し組織を採取することがあります。

 なお、卵巣がんは他のがんに比べて術前からあるいは手術直後に血栓塞栓症(血栓ができて肺などに詰まる現象)が起こりやすいため、弾性ストッキングや薬などでの予防が行われます。

妊娠の可能性を残したい!卵巣を温存できる状態とは

 卵巣がんは再発しやすいため、患者さんを助けることを優先し、片側の卵巣だけに発症している場合でも、両側の卵巣を切除するのが原則です。しかし、なかには卵巣を残して治療後に妊娠することを強く望む患者さんもいるでしょう。
 妊娠の可能性を残せる卵巣がんは、①がんが片側の卵巣にとどまっていること(Ⅰ期かⅡ期)、②がんが境界悪性型、あるいは低異型度型漿液性がん、類内膜がん、粘液性がんであることなどが条件となります。これらの条件にあてはまり、なおかつ患者さんが妊娠することを強く希望している場合は、手術を行った際にがんが発症している側の卵巣と卵管のみを切除して、子宮は温存し、妊娠する可能性を残すことができます。

参考資料

もっと知ってほしい卵巣がんのこと 2021年版,pp.10-11

公開日:2022年1月21日 最終更新日:2022年1月21日

BOOKLET
卵巣がん治療に関する冊子