肺がんの再発・転移
Q.再発・転移とはどのような状態になることですか
A.再発とは、目に見えるがんがなくなった後に再びがんが出現することや、がんが縮小、あるいは安定した状態から増大することです。
転移とは、がんが最初に発生した肺とは別の臓器に移動し、そこで増えることをいいます。
手術などで肺がんの病巣が完全に消失しても、本当に体内からがん細胞がすべて消え去ったかどうかはわかりません。
実際、残っている目に見えないがん細胞から再びがんが現れる(再発)こともあります。
さらに、治療が奏功し、いったんは縮小あるいはそれ以上大きくならなかったがんが再び増大し始める(再発)こともあります。がん細胞が最初に発生した肺から、血管やリンパ管の中に入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の臓器(主に脳、骨、肝臓など)に移動し、そこで増殖する(転移)こともあります。
肺がんの再発・転移は、ほとんど2年以内に起こっており、逆に5年以上経てばかなり少なくなるといわれています。
継続して治療を行わない場合も、3~6か月ごとに定期的に通院して、再発や転移の有無を胸部X線検査、CT検査などによって調べます(図表20)。
再発や転移が起こると、治療の目標は、がんの進行を抑える、がんによる症状を和らげるといったことになります。
手術などでいったん根治してから再発・転移した場合は、病期に応じた治療を行います。
薬物療法中に、がんが縮小、あるいは安定した状態になった後、再び増大したり、ほかの臓器に転移したりした場合は、1次治療から2次、3次治療へ進めていきます。
このような治療とともに、痛みなどに対する緩和ケアが並行して行われ、よりよい状態でがんと付き合っていけるようにサポートが行われます。
また、条件さえ満たせば、より効果のある治療法の開発をめざす臨床試験にも参加し、開発中の新しい治療を受けることもできます(コラム「臨床試験とは?」)。
その結果、治療によって再発後も長期生存している患者さんもいます。
再発・転移後もがんの状態や全身状態と自分自身の希望とを照らし合わせ、担当医とよく話し合ったうえで、ともに治療法を決めていくことが大切です。
臨床試験とは?
新薬や治療法を開発する過程において人間(患者)を対象に有効性と安全性を科学的に調べるのが「臨床試験」です。
臨床試験には第1相:安全性の確認、第2相:有効性・安全性の確認、第3相:標準治療との比較による有効性・安全性の総合評価の3段階があります。
現在、標準治療として確立されている薬剤や治療法もかつて臨床試験が行われ、有効性や安全性が認められたものです。
臨床試験への参加は未来の患者さんに貢献することにもつながっています。
参考資料
もっと知ってほしい肺がんのこと 2017年版,pp.25