胃がんの薬物療法の副作用
Q.薬物療法ではどのような副作用がいつごろ現れますか
A.副作用の現れ方は、抗がん剤の種類によって異なり、個人差もあります。副作用の多くはどのように現れるかがわかっており、症状を軽減するための対策も進んでいます。医師や薬剤師、看護師からあらかじめ説明を受けておきましょう。
副作用の現れ方(症状、時期、期間、頻度、程度など)は、抗がん剤の種類によって異なり、個人差もあります(図表15)。従来の抗がん剤である殺細胞薬は、正常細胞の増殖も抑えるため、骨髄細胞や胃腸の粘膜細胞、生殖細胞、毛根細胞など活発に分裂する細胞が多い部位では、副作用が出現しやすくなります。一般的に、胃がんの薬物療法に用いられる殺細胞薬で起こりやすい副作用は、消化器症状(食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢など)、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、貧血など)、口内炎、脱毛、倦怠感などです。薬剤によっては特有の副作用が現れることがあり、S-1(※TS-1とも呼ばれる)やカペシタビンでは流涙(涙が出る)や手足皮膚症候群、皮膚の色素沈着、パクリタキセルやドキタキセルでは過敏症といった症状がみられます。
また、分子標的薬はがん細胞の特定の分子を狙って作用することから、当初は副作用が少ないと考えられていました。しかし、実際には、殺細胞薬ではみられない副作用を起こします。胃がんに用いられる分子標的薬のうち、まれにトラスツズマブでは投与開始24時間以内の注入反応(発熱、寒気、吐き気、頭痛など)が、ラムシルマブでは高血圧や鼻出血が起こるときがあります。
最近は、副作用に対するさまざまな対策が工夫され、副作用の症状を抑える薬の開発も進んでいます。多くの場合、副作用の発現を予防したり、症状を軽減したりすることができます。薬物療法を受ける際には、副作用の現れ方やその対処法について、あらかじめ医師や薬剤師、看護師などに説明を受けておくことが大切です。
こんな症状が出たときにはすぐ病院へ連絡を!
下記のような症状が現れたときには命に関わる危険性があります。
治療を受けている医療機関へ連絡しましょう。
●38度以上の発熱、悪寒
●呼吸困難
●動悸や息苦しさ、空咳が続く
●下痢がひどく水分もとれない
夜間・休日の緊急時の連絡先と連絡方法を担当医、看護師、薬剤師に確認しておき、電話の横などすぐわかる場所に電話番号などをメモして貼っておくと安心です。
参考資料
もっと知ってほしい胃がんのこと 2016年版,pp.20-21