乳がんの手術による後遺症
手術による後遺症にはどのようなものがありますか
リンパ浮腫の予防にもなるリハビリ体操
手術で腋窩リンパ節郭清をしたときには、リンパ液の流れが悪くなり、肩関節が拘縮して動かしにくくなることがあります。予防のためには、リンパ液を外に出すドレーンをつけている間は、ボールを握る運動や、指を1本ずつ動かす指の曲げ伸ばし運動、ドレーンが抜けてからは、腕の挙上運動(図表10)や肩関節を回す運動などのリハビリテーションを1日3回3か月以上継続すると効果的です。
手術の後遺症として最も問題になるのは、リンパ節郭清や放射線療法が原因で、リンパ液がたまって腕が腫れた状態になるリンパ浮腫です。リハビリテーションは、リンパ浮腫の予防にも役立つと考えられています。リンパ浮腫を防ぐには、重いものを持ったり、腕を強く振るような運動を避けることも大切です。また、体を締めつけるような下着や衣服は避けましょう。皮膚に傷ができると、腕の血液の循環量が増え、リンパ浮腫を発症しやすくなるので、日ごろから、虫刺されやけが、細菌感染、日焼けなどをしないように気をつけることも大切です。さらに鍼・灸や強い力でのマッサージは逆効果なので、絶対に行わないようにしてください。
治療は、弾性着衣(弾性スリーブや弾性グローブ)や弾性包帯による圧迫療法、圧迫療法をした状態での運動療法、手を使ったリンパドレナージ、皮膚の保湿ケアなどを組み合わせて行います。圧迫療法に使う弾性着衣や弾性包帯は保険診療の対象になります。10㎜以上腕回りが太くなったとき、腕のむくみや腫れがあるときには、担当医に相談しましょう。リンパ浮腫の治療を専門にしたリンパ浮腫外来がある医療機関もあります。
術後の痛みは我慢せず医療者へ伝えよう
手術後は麻酔薬や鎮痛薬を使って痛みを抑えますが、強い痛みを感じるようなら我慢せずに担当医や看護師に伝えましょう。痛みを我慢し過ぎると、かえって痛みを感じやすくなり、より強い薬を使わないとコントロールできない状態になります。腋窩リンパ節郭清をしたときには、手術の傷やわきの下の周辺の知覚が低下することがあります。
こういった痛み、違和感、しびれ、知覚低下などは、術後数か月でほとんど感じなくなるのが一般的ですが、知覚異常、鈍痛、神経痛のようなキリキリとした痛みが数年以上続く人もいます。耐えがたい痛みや痛む回数は徐々に少なくなる人が多いものの、眠れない、仕事や家事ができないなど日常生活に支障があるようなら、緩和ケア外来や麻酔科、ペインクリニックで相談しましょう。
参考資料
もっと知ってほしい乳がんのこと 2023年版,p.11