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多発性骨髄腫の合併症改善治療

Q.多発性骨髄腫による症状(合併症)を改善する治療について教えてください

A.骨病変、高カルシウム血症、貧血、腎不全、感染症、神経障害などの合併症の症状は、骨髄腫に対する薬物療法で軽減する場合もありますが、合併症そのものを対象とした治療を行うことも重要です。


 多発性骨髄腫の合併症の中には、緊急対応が必要なもの(図表14)と、骨髄腫の治療と並行して治療するものとがあります。

緊急性の高い合併症への対応

●骨病変

 大部分の多発性骨髄腫は、診断時点で骨破壊によって肋骨や脊椎などの骨がもろくなっており、初診時で約6割の人に骨の痛みがみられます。こうした骨病変がある人にはデノスマブの皮下注射、またはビスホスホネート製剤ゾレドロン酸の点滴投与を行うと、骨髄腫による骨の破壊が抑えられます。
 腎障害のある人は、ソレドロン酸を減量するかデノスマブを選択します。どちらの薬も歯肉感染や顎の骨が炎症を起こし壊死する顎骨壊死を起こしやすいので、事前の歯科医のチェックと口腔ケアが重要です。
 デノスマブはけいれんや不整脈を引き起こすこともある重い低カルシウム血症の副作用が出やすいので予防のためにビタミンD、カルシウム剤を併用します。

 骨折しているときや骨がもろくなっている場合に、患部の骨を補強する手術が必要なこともあります。脊椎の圧迫骨折がある場合は、コルセットを着けると骨折の進行を抑えられ、痛みが軽減します。骨の痛みの治療には放射線照射も有効です。非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)は腎障害を起こしやすいので、漫然と使わないよう注意します。

 また、中腰の姿勢、重いものを持ち上げるなど骨に負担をかける動作を避け、しりもちをつくようなことがないよう注意します。ただし、過度の安静は筋力低下や骨がもろくなるもとです。担当医に相談し、散歩など無理のない運動を続けましょう。

骨髄腫の放射線療法

 孤立性形質細胞腫などの治療には、4~5週間で20~25回、総量40~50グレイの放射線を患部に照射する治療を行います。骨の痛みの軽減には少量の放射線照射が有効です。

●高カルシウム血症

 高カルシウム血症は、食欲の低下や脱水症状を引き起こし、腎不全や意識障害につながる恐れがあり、迅速な対応が必要です。
 生理食塩水を点滴し脱水症状を改善させるほか、心臓への負担を減らし尿へのカルシウム排泄を促すため、利尿薬も投与します。また、高カルシウム血症の治療には、骨病変の治療と同様にゾレドロン酸の点滴投与が有効です。緊急時や腎障害のある人には、デノスマブ※1の皮下注射を行うこともあります。
※1 骨髄腫による高カルシウム血症は、2020年2月現在、デノスマブの適応症にはなっていません

●貧血

 多発性骨髄腫の治療によって改善する場合が多いですが、貧血がひどいときは、赤血球の輸血を行います。
 腎機能の低下による貧血には、赤血球を増やすエリスロポエチン製剤を注射することもあります。

●腎不全

 ボルテゾミブを含む多剤併用の薬物療法で改善することが多いので、できるだけ早く多発性骨髄腫の治療を開始することが重要です。腎機能を回復させるためには、水分を多めに摂取するようにします。むくみがひどい場合には利尿薬を使うこともあります。
 腎機能がかなり低下しているときには、一時的に人工透析を行います。

●感染症

 インフルエンザ流行期には、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの投与が推奨されます。ただ、多発性骨髄腫になるとワクチンによる抗体をつくる力が低下するので、健康な人に比べて効果が低い恐れがあります。
 造血幹細胞移植時やボルテゾミブ、抗CD38抗体を使うときには、帯状疱疹を発症しやすいため、抗ヘルペスウイルス薬のアシクロビルを予防的に服用します。
 必要に応じて免疫グロブリン製剤を投与することもあります。

●神経障害

 脊髄圧迫による知覚障害や運動麻痺が起こったら、早急に放射線照射や副腎皮質ステロイド薬による治療を開始します。緊急手術が必要な場合もあります。

●過粘稠度症候群

 血液中にM蛋白が多くなると、血液がドロドロになり、めまい、頭痛、目が見えにくくなるといった症状が出る過粘稠度症候群(かねんちょうどしょうこうぐん)になります。M蛋白の急速な除去が必要な場合、M蛋白を含む血漿(けっしょう)を除去し、健康な人の凍結血漿を入れる血漿交換を行います。

参考資料

もっと知ってほしい多発性骨髄腫のこと 2021年版,pp.13-14

公開日:2022年6月8日 最終更新日:2022年6月8日

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