多発性骨髄腫の薬物療法の副作用
Q.薬物療法ではどのような副作用が現れますか
A.出やすい副作用の種類や出現時期は、使う薬やその量によって異なります。
担当医や薬剤師の説明をよく確認して、およその出現時期と対処法、どういうときに病院へ連絡したほうがよいのかを知っておきましょう。
多発性骨髄腫の薬物療法は効果がある半面、ほとんどの人に副作用が出ます。患者さんによって、症状の出方や出現時期には差がありますが、薬によって起こる可能性の高い副作用とその出現時期がある程度わかっています(図表15)。
吐き気・嘔吐などつらい副作用は事前の対策でかなり軽減できるようになってきています。副作用を恐れて自己判断で薬物療法を中断しないようにしましょう。
多発性骨髄腫の治療に使う薬で出やすい副作用は、骨髄抑制(貧血、白血球・好中球・血小板の減少)です。骨髄抑制は自覚症状がないことも多く、起こる時期は薬によって異なります。
また、感染症にかかりやすくなるので、いつも以上に手洗い、うがい、人混みを避けるなどの感染症対策を心がけることが大切です。
骨髄腫による腎障害のある人は、ボルテゾミブを含む治療をできるだけ早く始めることが推奨されます。しかし、腎機能の悪化につながる腫瘍崩壊症候群※を起こすことがあり、一時的に人工透析が必要な場合があります。
※ 腫瘍崩壊症候群:薬物療法によって一気に骨髄腫細胞が崩れ、がん細胞の死骸から放出された成分により、腎不全や不整脈を引き起こす。重症になると死亡するケースも。
ボルテゾミブを含む薬物療法は、間質性肺炎、強い末梢神経障害(手足のしびれや立ちくらみ)といった重い副作用が出る恐れがあります。肺機能が低下している人やしびれが出やすい人は、他の治療法への変更を検討します。ボルテゾミブは皮下注射すると、静脈内投与よりも末梢神経障害が出にくいことがわかっています。
同じプロテアソーム阻害薬でも、カルフィルゾミブ、イキサゾミブは、比較的末梢神経障害や肺障害が出にくいのですが、カルフィルゾミブは高血圧や心臓病があると、高血圧の悪化や心障害のリスクが高まります。
イキサゾミブは下痢や皮疹にも注意が必要です。プロテアソーム阻害薬は帯状疱疹のリスクが増加するので、抗ヘルペスウイルス薬の投与を検討します。
免疫調節薬のサリドマイド、レナリドミド、ポマリドミドは胎児に異常をきたすリスクがあるので、妊娠を避けるようにします。
サリドマイドは血栓症、末梢神経障害、レナリドミドは血栓症、骨髄抑制に要注意で、レナリドミドは腎障害の程度に応じて減量を検討します。サリドマイドやレナリドミドとメルファランとの併用は、二次発がんの発症リスクが高い傾向があります。
抗体薬のダラツムマブ、イサツキシマブ、エロツズマブは、輸注関連反応(インフュージョン・リアクション)に要注意です。
HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害薬のパノビノスタットは、下痢や疲労感が出やすい薬です。また、骨病変などの治療に用いられるビスホスホネート製剤のゾレドロン酸とデノスマブは、まれに顎骨壊死を起こす恐れがあります。投与後の低カルシウム血症にも注意が必要です。
副作用には、自分で対処でき、ある程度我慢してよいものと、すぐに病院へ連絡したほうがよいものがあります。出やすい副作用の対処法などを担当医などに必ず確認しておきましょう。
こんな症状が出たときにはすぐ病院へ連絡を!
下記のような症状が現れたときには命に関わる危険性があります。
治療を受けている医療機関へ連絡しましょう。
●38度以上の発熱・悪寒 ●呼吸困難 ●動悸や息苦しさ、空咳が続く
●下痢がひどく水分もとれない ●片足だけむくみがひどい
夜間・休日の緊急時の連絡先と連絡方法を担当医、看護師、薬剤師に確認しておき、電話の横などすぐわかる場所に電話番号などをメモして貼っておくと安心です。
参考資料
もっと知ってほしい多発性骨髄腫のこと 2021年版,pp.15-16