慢性リンパ性白血病の薬物療法の副作用
Q.薬物療法の主な副作用とその対処法について教えてください
A.出やすい副作用は薬物療法の内容によって異なります。
薬物療法の選択肢が複数ある場合には、出やすい副作用も考慮する条件の一つになります。主な副作用の出現時期と対処法についても知っておきましょう。
CLLの薬物療法では、多くの場合、大量の抗がん薬を投与するため、さまざまな副作用が出ます。症状の出方や出現時期には個人差がありますが、CLLの薬物療法によって起こる可能性の高い副作用とその出現時期が、ある程度わかっています(図表9、10)。
FCR療法やFC療法で出やすい副作用は、骨髄抑制(白血球・血小板・赤血球減少)です。特に頻度が高いのは重度の白血球の減少です。貧血、吐き気・嘔吐、脱毛も頻度の高い副作用です。抗がん薬は2剤あるいは3剤を併用すると、1剤で投与するときよりも強い副作用が出やすくなります。
イブルチニブの主な副作用は、下痢、吐き気、好中球減少、関節痛で、まれではあるものの間質性肺炎や高血圧、心房細動、出血(特に抗凝固薬服用中)に注意が必要です。イブルチニブの服用中は、心電図や心エコーなどの検査を定期的に実施します。
ベンダムスチン療法では、FCR療法より頻度は低いものの、骨髄抑制、吐き気・嘔吐、食欲不振、便秘が起こりやすくなります。
再発時に使われるアカラブルチニブに多い副作用は、頭痛、骨髄抑制、下痢、肺炎、高血圧などです。リツキシマブ、アレムツズマブで頻度の高い副作用は、インフュージョン・リアクションと呼ばれるアレルギー反応(輸注関連反応)で、血圧低下や発熱、呼吸困難、発疹などの症状が出ます。治療後12~72時間以内に体内の尿酸が増え、カリウム、カルシウム、リンなどの電解質のバランスが崩れる腫瘍崩壊症候群が出現することもあります。ベネトクラクスで最も注意すべき副作用は腫瘍崩壊症候群、白血球減少、感染症です。
吐き気・嘔吐、好中球減少などは、事前に予防薬を服用したり対策を取ったりすることで、ある程度軽減できるようになってきています。貧血がひどいときには輸血が必要になることがあります。CLLの患者さんは、ただでさえ正常な血液細胞が減少している状態で感染症にかかりやすいので、骨髄抑制が出やすい治療中は、いつも以上に手洗い、うがい、マスクの着用、人混みを避けるといった感染症対策を心がけることが大切です。
CLLの治療薬には脱毛が起こりにくい薬が多いのですが、シクロホスファミドなど脱毛を生じやすい抗がん薬を使うと、治療開始から2〜3週間くらいで髪、眉毛、まつ毛などが抜け始めます。髪の毛や体毛は、脱毛しやすい抗がん薬の投与が終われば数か月から半年くらいで元の状態に戻ります。
内服するタイプの抗がん薬を使っているときには、副作用を恐れて勝手に減量したり中止したりしないようにしましょう。
重篤な副作用が出たときには、医師の判断によって、いったん薬物療法を中止し、抗がん薬の減量や薬の変更を検討します。
副作用には、自分で対処でき、ある程度様子をみてもよいものと、すぐに病院へ連絡するべきものとがあります。薬物療法を受ける際には、副作用の対処法と、どういうときに病院へ連絡すべきかを確認しておきましょう。
こんな症状が出たときにはすぐ病院へ連絡を!
下記のような症状が現れたときには命に関わる危険性があります。
治療を受けている医療機関へ連絡しましょう。
●38℃以上の発熱・悪寒 ●呼吸困難 ●動悸や息苦しさ、空咳が続く
●下痢がひどく水分もとれない ●片脚だけむくみがひどい など
夜間・休日の緊急時の連絡先と連絡方法を担当医、看護師、薬剤師に確認しておき、電話の横などすぐわかる場所に電話番号などをメモして貼っておくと安心です。
参考資料
もっと知ってほしい慢性リンパ性白血病のこと 2021年版,pp.12-13