膀胱がんの再発・転移
Q.再発・転移とはどのような状態になることですか
A.再発とは、治療後再びがんが出現することです。
経尿道的膀胱腫瘍切除術を行ったときには膀胱内、膀胱を摘出したときでも腎盂や尿管にがんが発生する場合があります。また転移とは、リンパ節や膀胱から離れた臓器にがんが広がり、そこで成長した状態です。
再発とは、膀胱がんができ始めたころから膀胱の中や体のどこかにあった、目に見えないくらい微小ながん細胞が、初期治療でも死滅せずに後になって出てきた状態です。再発・転移の徴候があるかどうかは、腫瘍マーカー、尿細胞診などで調べます。上皮内がんの場合には、ウロビジョンという遺伝子検査を再発の診断補助として用いることがあります。
膀胱がんの再発には、膀胱内にがんが再び出てくる局所再発と、リンパ節や、肺、肝臓、骨などの離れた臓器や器官にがんが発生する遠隔転移再発があります。
特に、筋層非浸潤性がんはTURBT後に局所再発を繰り返すことが多いのが特徴です。ただ、局所再発の場合には、再度TURBTを実施し膀胱内BCG注入療法を行ったり、膀胱全摘除術を実施したりすれば、完治が期待できます。膀胱内だけではなく、尿道や腎盂・尿管に再発がみられたときには、手術でがんを取り除いた後、薬物療法を行います。
リンパ節、肺、肝臓、骨など膀胱から離れた器官への遠隔転移の場合には、すでに全身にがんが広がっているので、手術で取り除くのは難しい状態です。術前または術後の全身薬物療法から12か月超経って再発・転移した場合には、GC療法とアベルマブによる維持療法など、「転移がんの全身薬物療法」に準じた治療を行います。一方、術前または術後の全身薬物療法から12か月以内に再発・転移したとき、あるいはGC療法が効かなくなったときには、免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブを使います。
ペムブロリズマブが効かなくなった人に対する標準治療はありませんが、シスプラチン、ゲムシタビン、5FUなどの単剤治療、あるいは複数の薬を組み合わせた治療、また臨床試験への参加を検討し、できるだけ長く、がんとの共存を目指します。
再発・転移を告知されたときには、初めてがんと告げられたときよりも強いショックを受けるかもしれません。膀胱がんの場合は、再発を繰り返しても元気に生活している人がたくさんいます。再発治療も担当医とよく相談し、自分らしく生きられるように自分自身の希望をしっかりと伝え、納得して治療を受けることが大切です。不安や心のつらさ、痛みなどは我慢したり一人で抱え込んだりしないで、担当医や周囲の人に伝えるようにしましょう。
膀胱がん後の発生もある腎盂・尿管がん
腎盂、尿管、尿道の一部や膀胱は尿路上皮と呼ばれる粘膜で覆われているため、膀胱がんと同時に腎盂や尿管にもがんが見つかることがあり、膀胱がん治療後も、腎盂・尿管にがんが発生しやすい特徴があります。
そのため、膀胱がんの治療前、そして治療後の定期検診の際には、尿細胞診、超音波検査、CT検査やMRI検査などを行い、腎盂・尿管にもがんがないか調べます。腎盂・尿管がんが見つかった場合には、腎盂と尿管、場合によっては腎臓や膀胱の一部を切除する手術を行います。また、術前に、シスプラチンを含んだ薬物療法を行う場合もあります。腎盂・尿管にがんが見つかったときにも、担当医の説明をよく聞き納得して治療を受けましょう。
参考資料
もっと知ってほしい膀胱がんのこと 2022年版,pp.18