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子宮頸がんの薬物療法の副作用

薬物療法ではどのような副作用がいつごろ現れますか

子宮頸がんの治療に使われる薬の副作用は種類によって異なり、また、個人差が大きいのも特徴です。起こりやすい副作用を予想して、あらかじめ、あるいは症状が出始めたら早期に対応できるようになってきています。

抗がん剤は正常な細胞にも少なからず影響を及ぼすため、さまざまな副作用が現れます。特に新陳代謝の盛んな細胞である髪の毛、口や消化管の粘膜、骨髄などが影響を受けやすく、脱毛や口内炎、下痢、骨髄抑制などが起こります。抗がん剤による治療は、日常生活にがんの影響が少なく、肝臓や腎臓、骨髄などの機能に大きな問題がない患者さんが対象ですが、副作用が重ければ、治療薬の変更や治療の休止なども検討されます。

抗がん剤の副作用には、症状が自覚しやすいものと、自分ではわからずに検査ではじめて明らかになるものがあります。個人差が大きいことも特徴です。

前者の代表である吐き気や嘔吐は、事前に制吐剤(吐き気止め)を服用することでコントロールできるようになってきました。手足のしびれや痛み、腫れのような末梢神経症状や手足症候群は早めの治療が必要です。図表15に対処法を示してあります。どんな副作用が起こるかをあらかじめ知っておけば、対応できることも多く、治療の中断や中止を避けられます。

後者の代表は、白血球や好中球、血小板などが減少する骨髄抑制です。抗がん剤を使い始めて1~2週間で現れ、感染や貧血のリスクが高くなるので注意が必要です。

分子標的薬のベバシズマブは、高血圧や呼吸困難などのショック、アナフィラキシーに注意が必要です。血栓、骨髄抑制、高血圧、脱毛や発疹、吐き気・嘔吐や食欲不振のような消化器症状なども出現しやすい副作用です。

免疫チェックポイント阻害薬は使用直後に 発熱、かゆみ、発疹、血圧上昇・低下、呼吸困難などのショック症状が現れることがあります。また、活発化したT細胞が自己を攻撃し続け、時間が経ってから糖尿病、甲状腺機能低下症、心筋炎などを引き起こすリスクがあります。ときには、数か月、数年経ってから出現することがあるので、長く経過をみることが重要です。ペムブロリズマブは、骨髄抑制、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、皮膚のかゆみ、間質性肺炎など、セミプリマブは尿路感染、貧血、吐き気・嘔吐、筋肉痛などの副作用が知られています。

心配なことがあれば、担当医や看護師、薬剤師に相談しましょう。特に外来化学療法を受けている人は体調の変化に備えて、緊急連絡先を把握しておきましょう。

子宮頸がんの治療に使う主な薬とその副作用

薬剤名 主な副作用
抗がん剤 シスプラチン 吐き気・嘔吐、食欲不振、脱毛、聴力低下・難聴・耳鳴り、心筋梗塞、肝障害・肝機能異常、末梢神経症状(手・足などのしびれ、痛み、感覚減退)、急性腎不全、骨髄抑制、ショック、アナフィラキシー
カルボプラチン 吐き気・嘔吐、食欲不振、蕁麻疹、脱毛、倦怠感、悪寒、体重減少、呼吸困難、口内炎、末梢神経症状、骨髄抑制、間質性肺炎、急性腎不全、ショック、アナフィラキシー
パクリタキセル 末梢神経症状、脱毛、筋肉痛・関節痛、吐き気・嘔吐、肝障害、腎障害、過敏症、手足症候群、呼吸困難
分子標的薬 ベバシズマブ 高血圧、末梢神経症状、血栓、骨髄抑制、脱毛、発疹、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、倦怠感、ショック、アナフィラキシー
免疫チェックポイント阻害薬 ペムブロリズマブ 骨髄抑制、間質性肺炎、大腸炎、下痢、肝障害、腎障害、心筋炎、甲状腺機能低下症、下垂体障害、副腎障害、糖尿病、吐き気・嘔吐、食欲不振、疲労感、かゆみ、発疹、脱毛、発熱、ショック
セミプリマブ 間質性肺炎、大腸炎、肝障害、甲状腺機能低下症、副腎障害、下垂体炎、糖尿病、腎障害、尿路感染、貧血、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢・腹痛、便秘、発疹、疲労感、筋肉痛
添付文書などを参考に作成
子宮頸がんの薬物療法で現れる主な副作用と対処法

症状・副作用 対処法
吐き気・嘔吐、
食欲不振
あらかじめ制吐剤(吐き気止め)を服用する。治療当日は乳製品や脂っこいものを避ける。吐き気を感じたら、冷たい水などでうがいする。食欲が少しあれば、少量ずつ何回かに分けて食べる。食べられないときにも水分をとるようにする。ただし、冷たい飲み物は避ける。香りの強い食べ物や環境は避けるほうがいい。おなかの周囲がきつくない服装をする。
下痢 整腸剤を服用する。水のような下痢が続くときには下痢止めを使う。温かい飲み物をこまめに飲み、アルコールやカフェイン、香辛料、繊維の多い食品を避ける。肛門部を清潔に保つ。ただし、洗いすぎに注意する。
倦怠感 疲れを感じたら、休息を取る。車の運転は避ける。軽い運動や家事によって倦怠感が緩和されることもある。
末梢神経症状 手足や唇のピリピリした感じ、しびれがあれば、担当医に。冷たい物を触らないようにして、温かい飲み物・食べ物をとる。スリッパ、靴下、手袋で手足を温める。ビタミン剤や漢方薬が効く場合もある。けがややけどをしても気づきにくいので、気をつける。
手足症候群 皮膚を清潔に保ち、クリームなどで保湿する。手袋や軍手、厚手の靴下で手足を保護する。きつい靴や硬い靴、密着する下着や洋服、長い時間の歩行・立位、ジョギングやエアロビクスのような足への衝撃、ねじ回し・包丁・ナイフ・シャベルでの作業、紫外線、熱いお風呂やシャワーを避ける。
脱毛 治療前に髪を短く切っておく。治療が始まったら、帽子やシャワーキャップ、ナイトキャップで髪の毛の散らばりを防ぐ。必要であれば、バンダナやかつらを使う。洗髪時に頭皮を傷つけないように爪を切る。
骨髄抑制 血液検査でわかる。感染しやすくなるため、こまめなうがい(冷たい水は避ける)、手洗い、シャワーや入浴、起床時・食後・就寝前の歯磨きで予防する。人混みを避け、外出時はマスクを着用する。けがややけどに注意する。発熱や悪寒、排尿痛があれば、診察を受ける。鼻血や歯肉からの出血があれば診察を受ける。
間質性肺炎 発熱や息苦しさ、空咳が続く場合には受診する。原因となった薬の使用を中止し、ステロイド薬などで治療する。
口内炎 治療前に歯科で口腔ケアを受けておくと悪化しにくい。歯磨きやうがいで口の中を清潔にし、保湿を心がける。香辛料の強い食べ物や熱いもの、硬いものを避ける。
下垂体炎・下垂体障害 免疫チェックポイント阻害薬の重篤な副作用で、自覚症状がほとんどないため、使用後は定期的に検査を受ける。場合によっては薬で治療する。これらの副作用は数年後に出現することもあるので、免疫チェックポイント阻害薬を使用したことを忘れないようにし、がん以外の病気で受診する場合にも免疫チェックポイント阻害薬の使用経験を医師に告げる。
副腎障害
心筋炎
膵炎・ 1型糖尿病
肝障害
胆管炎
腎障害
国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス「患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版」などを参考に作成
こんな症状が出たときにはすぐ病院へ連絡を!

下記のような症状が出たときには命に関わる危険性があります。
治療を受けている医療機関へ連絡しましょう。

●38度以上の発熱・悪寒
●呼吸困難
●動悸や息苦しさ、空咳が続く
●嘔吐・下痢がひどく水分もとれない

夜間・休日の緊急時の連絡先と連絡方法を担当医、看護師、薬剤師に確認しておき、電話の横などすぐわかる場所に電話番号などをメモして貼っておくと安心です。

参考資料

もっと知ってほしい子宮頸がんのこと 2024年版,p.16、17

公開日: 最終更新日:

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