胃がんとは
Q.胃がんとはどのような病気ですか
A.胃がんは、胃の内側の粘膜に発生し、胃壁の外側へ向かって進行します。
最近では、根治が望める早期がんでの発見が増え、死亡率は低下しています。その一方で、罹患率は第1位で高齢になるほど増え、女性より男性に多いがんです。
胃は、みぞおちのやや左側にある袋の形をした臓器です。胃の周りには肝臓や脾臓、胆のう、大腸などがあります。食道から胃への入口を噴門、胃から十二指腸への出口を幽門といい、胃は入口から約3分の2を占める胃体部と出口に近い残り約3分の1の幽門前庭部の2つに分けられます(図表1左)。
胃壁は主に6層からなり、最も内側には粘膜層があり、その下に粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜があります(図表1右)。
粘膜から発生し、胃壁の外側へ進行
胃がんの多くは、日常的に摂取する食事(塩分の摂りすぎ、野菜・果物の不足など)や喫煙、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染などによって起こる粘膜の炎症が慢性萎縮性胃炎や腸上皮化生(胃粘膜が腸粘膜と同じような機能をもつ細胞に置き換わること)を引き起こし、やがて粘膜内の細胞ががん化することで発生すると考えられています。
がんが発生してから時間が経つと、胃がんは横に大きくなると同時に胃壁の中に入り込んでいき(浸潤)、漿膜やその外側に広がり、近くの大腸やすい臓などにも及びます。また、粘膜下層には多くの血管やリンパ管があるため、がん細胞が粘膜筋板を突き抜けると、これらの脈管を通して胃の外へ流れ出る機会が増加します。
がんが胃壁の中へ深く入り込んでいくにつれ、転移しやすくなることから、がんが粘膜下層までにとどまり、転移の可能性が低い場合を「早期胃がん」、そうでない場合を「進行胃がん」といいます。なお、リンパ節転移は早期胃がんで起こることもあり、進行胃がんの一部では腹膜や肝臓にも転移がみられます。
日本では早期胃がんで発見されることが多くなり、その根治率は90%以上と高いため死亡率は低下しています。しかし、胃がんは日本人に最も多くみられるがんで、男女とも50歳代から増加し、罹患率、死亡率ともに女性より男性のほうが高いのが特徴です。
参考資料
もっと知ってほしい胃がんのこと 2016年版,pp.4