大腸がん治療
Q.大腸がんではどのような治療が行われますか
A.大腸がんでは、病期(ステージ)に応じた標準的な治療方針があります。
大腸がんは、がんを完全に切除できれば完治する可能性が高いため、ほかの臓器に転移がある場合でも積極的に手術を行います。
大腸がんの治療法には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線療法などがありますが、病期(ステージ)に応じて標準的な治療方針が設定されています(図表6)。
●ステージ0の大腸がん
ステージ0の大腸がんでは、がんは粘膜の中にとどまっているので、内視鏡によってがんを切り取る治療をします(大腸がんの内視鏡治療)。取り残しがなければ、ステージ0の大腸がんは内視鏡治療のみで完治します。
●ステージⅠの大腸がん
ステージⅠの大腸がんの中で、大腸の壁への浸潤が浅いものに対しては、ステージ0と同様に内視鏡治療を行います。
浸潤が深いものでは、内視鏡治療ではがんを取り残してしまう可能性やリンパ節転移を起こしている可能性があるため、手術によってがんの部分を含む腸管と、転移の可能性のある範囲のリンパ節を切除します(大腸がんの手術法)。
●ステージⅡ、Ⅲの大腸がん
ステージⅡ、Ⅲの大腸がんでは、手術によって、がんの部分を含む腸管と、転移の可能性のある範囲のリンパ節を切除します(大腸がんの手術法)。切除したリンパ節にがんの転移があった場合には、再発予防のための抗がん剤治療(術後補助化学療法)がすすめられます(大腸がんの薬物療法)。
●ステージⅣの大腸がん
ステージⅣの大腸がんの場合は、がんの部分を取り除くだけでは、ほかの臓器に転移したがんがまだ残っている状態なので、すべてのがんが取り切れたことにはなりません。
一般に大腸がんでは、肝臓や肺に転移したがんも、それらが手術で切除することが可能であれば、積極的に手術を行います。何回かに分けて手術を行うこともしばしばあります。
がんを手術ですべて取り切ることができれば、約40%の人では完治が期待できます。ただし、転移のある場所・数や、その時点での身体の症状などに応じて、手術以外の治療法(薬物療法や放射線療法など)がすすめられる場合もあります(コラム「大腸がんの放射線療法」、大腸がんの薬物療法)。
ステージⅣの大腸がんの治療は病状によりさまざまです。担当医からよく説明を受け、患者さん・ご家族の皆さんでよく相談して治療を受けましょう。
大腸がんの放射線療法
放射線療法は、がんの三大療法の1つで、がん細胞を死滅させるために高エネルギーの放射線を照射する治療法です。大腸がんでは、主に直腸がんに対して、手術前にがんを小さくして人工肛門を回避し、手術後の再発を抑制する効果を期待する目的で行われます(補助放射線療法)。
身体の外から直腸とその周囲に放射線を照射します。薬物療法と併用する場合がほとんどで、週5回×4~5週間、合計40~50グレイ照射するのが一般的です。
また、2022年4月より、手術で切除するのが難しい再発した大腸がんに対して陽子線治療・重粒子線治療が保険収載となりました。
そのほかに、骨盤内に再発したがんや、骨や脳に転移したがんに対して、痛みや不快な症状を抑えるために放射線を照射することもあります(緩和的放射線療法)。
放射線療法には、照射が可能な部位とそうでない部位があり、特有の副作用もあります(腸炎による下痢、膀胱炎、皮膚炎など)。自分の病状が放射線療法に適しているかどうかは担当医からよく説明を受けてください。
参考資料
もっと知ってほしい大腸がんのこと 2022年版,pp.8-9