前立腺がん検査
Q.どのような検査が行われ、前立腺がんだと診断されるのですか
A. PSA検査、直腸診、超音波検査で「がんの疑い」があれば確定診断を下すために前立腺生検を行います。
前立腺がんのスクリーニングには、PSA検査、直腸診、超音波検査、MRI検査が用いられます。
PSA検査はPSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる腫瘍マーカーの測定、直腸診は医師が肛門から指を入れて、直腸粘膜越しに前立腺の状態を触診する方法です。
超音波検査(経直腸的前立腺超音波検査)では、超音波を発する器具(プローブ)を肛門から挿入し、前立腺の内部をモニター上に画像として描き出します。
MRI検査では前立腺と骨盤内を同時にみます。
このうち、最も簡便なのはPSA検査です。この検査だけでがんの診断がつくわけではありませんが、「疑い」の有無をチェックできるため、最初のスクリーニング検査として最適な方法とされています。
採血だけで結果が出るので、何ら自覚症状がない場合でも健康診断の一環のような感覚で受けやすく、住民検診ではこの方法が推奨されています。実際、PSA検査が普及したことで、前立腺がんの早期発見率は格段に上昇しました。
PSA測定法には何種類もありますが、最も一般的なのはタンデムR法で、「前立腺癌診療ガイドライン 2016年版」では64歳以下では3.0ng/ml以下、65~69歳では3.5ng/ml以下、70歳以上では4.0ng/ml以下を基準値としています。
無症状の場合はまずPSA検査を行い、その値によって直腸診やMRI検査を行うのが一般的な検査の流れです(図表3)。超音波検査は主に泌尿器科の専門病院などでPSA検査や直腸診で異常が見つかった場合に行われます。
これらの検査で前立腺がんの疑いがはっきりした場合は、最終的な診断のために前立腺生検が行われます。前立腺の組織を採取して、顕微鏡で詳しく調べる検査です。
前立腺がんは1つの前立腺のなかで多発することが多く、しかも個々の悪性度が異なるケースも珍しくありません。従って、精密に検査するために10~16か所から組織を採取します。
超音波ガイド下針生検
前立腺生検には、直腸壁越しに針を刺す経直腸的生検と、会陰部から針を刺す経会陰生検の2通りの方法があります。がん検出率の有意差はなく、病院によっては両者を併用しています。
以前は手探りで行っていましたが、近年は経直腸的検査法を応用して、前立腺内部の超音波画像を見ながら針を刺すのが一般的になりました。目で確認しながら実施するので、安全・確実な組織採取が可能です。痛みがないように局所麻酔が用いられます。
PSA検査とは?
PSA(前立腺特異抗原)は、前立腺の細胞でつくられるタンパク分解酵素です。前立腺に何か異常があると、これが血中に漏れて、血清中PSA値が上昇します。前立腺肥大症や前立腺炎でも値が上昇するので、高値だからといって、必ずしも前立腺がんとは限りません。がんの疑いがあると考えればよいでしょう。PSA値が基準値上限を超えた場合、値が高いほど、前立腺がんが強く疑われます。また、治療後に再発・転移の有無をチェックするときにも、まずこの検査が用いられます。
セカンドオピニオンとは?
診断や治療方針について担当医から説明された後、さらに情報がほしいときには、別の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」を利用する方法があります。セカンドオピニオンを受けたいときには、担当医に紹介状や検査記録、画像データなどを用意してもらう必要があります。ただし、まずは担当医のファーストオピニオンをしっかり聞くこと、セカンドオピニオンの内容は担当医に伝え、もう一度治療方針についてよく話し合うことが大切です。
セカンドオピニオン外来のある病院の情報は、近隣のがん診療連携拠点病院相談支援センターで得られます。予約が必要な、あるいは有料の病院も多いので、セカンドオピニオンを受ける病院には事前に受診方法と費用を確認しましょう。
参考資料
もっと知ってほしい前立腺がんのこと 2018年版,pp.5-6