NPO法人キャンサーネットジャパン > FAQs > 通院 > Q16:免疫チェックポイント阻害薬で治療中です。新型コロナに感染したら治療は休薬になりますか
40代・頭頸部がん

Q16:免疫チェックポイント阻害薬で治療中で薬が効いています。もし自分が新型コロナに感染し軽症だとしたら、また家族が感染し濃厚接触者となったとしたら、自宅待機になります。それでがん治療は休薬になりますか。新型コロナに罹患したら、せっかく著効しているがん治療を中止しなくてはならないのでしょうか。
40代・頭頸部がん

A:
まだまだ限られた報告しかありませんので現時点における見解となりますが、COVID-19の感染リスクが高くなった要因として、3ヶ月以内の化学療法、全身状態が不良(PS不良)、造血器腫瘍などが指摘されています。また、特定のがんに対する治療法が感染リスクをあげるかどうかについては明らかでなく、免疫チェックポイント阻害剤などのがん免疫療法の実施自体がCOVID-19の感染リスクになるとの報告はされていません。また、がん患者さんがCOVID-19に感染した場合の重症化(生命の危機に陥る)リスクとしては、原発性肺癌もしくはその他の癌の肺転移、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、好中球減少症、14日以内の化学療法の実施が指摘されています。したがって、コントロール不良の合併症(心疾患、肺疾患、糖尿病など)がなく、全身状態が良好で、免疫チェックポイント阻害剤投与前に感染兆候を全く認めていない場合は、必ずしも免疫チェックポイント阻害剤の投与を休止する必要まではないと考えられます。

ご質問にある、COVID-19に患者さんご自身が罹患された場合、もしくは、ご家族が罹患し患者さんが濃厚接触者となった場合は、感染から回復、もしくは、濃厚接触から14日間については、現時点では免疫チェックポイント阻害剤の投与は休止すべきと考えられます。なぜならば、COVID-19の重症化の原因として「過剰な免疫反応」が指摘されており、現時点では免疫チェックポイント阻害剤がその後押ししないとは言い切れないからです。
また、免疫チェックポイント阻害剤に著効している場合に同剤を一時中断することについてはあまり気にされる必要はないと考えられます。本剤は投与を止めたとしてもしばらく効果は残る(個人差はあるものの数ヶ月程度)という特長を持ちますので、COVID-19感染に罹患してしまった場合はまずはその治療に専念していただき、完治されてから免疫チェックポイント阻害剤の投与再開を検討してください。

いずれにせよ、投与の継続および中止(休止)については、主治医の先生とよくご相談ください。
本見解は、2020年5月3日現在までの情報に基づいておりますことを申し添えます。

2020.05.04up