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CNJ活動報告

神奈川県立こども医療センター もっと知ってほしい小児がんのこと(子ども向けイベント)

夏休み中の2019年8月10日(土)、神奈川県立こども医療センターと認定NPO法人キャンサーネットジャパンの共催により、小児がんをテーマにした子ども向け無料講座を開催しました。小児がんは、14歳までにかかるがんの総称です。小児がんで最も多い病気は白血病で全体の40%ほどを占めますが、中でも急性リンパ性白血病が最も多い病気です。今回集まった小学4年生から高校生まで43名の子どもたちと共に、同世代が闘っている小児がんを学び、自分たちにできることを考える機会を創出。先生方の惜しみない協力により実現した、夏休みの自由研究にもぴったりな多彩なプログラムの内容をレポートします。

取材・執筆/北林あい 撮影/小北一兵

小児がんを知ってもらうため基礎知識をレクチャー

最初のプログラムは、神奈川県立こども医療センター副院長で血液・腫瘍科部長の後藤裕明先生による、『“小児がん”ってどんな病気?』と題した授業。小児がんとは何か、なぜがんはできるのか、どんな治療法があるかなどをわかりやすくレクチャーしていただきました。冒頭で先生が、「子どもにもがんができると知っている人?」と質問すると、約半数が「知っている」と手を挙げていました。

「子どもにとってがんは、すごく希な病気です。日本全国で一年に2,000人くらい、神奈川県で100人くらいの子どもががんと診断されます。がんにはちゃんと治療法があり、小児がんは大人のがんより治りやすいのが特徴です。でも、すべてのがんが治るわけではなく、中には命を落とす人が大人にも、子どもにもいます」と後藤先生。小児がんの治療は手術、放射線療法、化学療法が有効で、特に重要な抗がん剤を用いた化学療法は副作用が治療後も続くことがあります。また、従来の放射線療法より強力で副作用が少ない陽子線治療や重粒子線治療、がん細胞だけをターゲットにした治療薬など、希望となる新たな治療法についてもご紹介いただきました。

先生は、「自分の身近に小児がんにかかった子どもがいたら、どうやって応援すればいいと思いますか。今日一日を通して考えてください」と投げかけました。

開会の挨拶をする神奈川県立こども医療センター総長の町田治郎先生。スイカキャップで登場し子どもたちを和ませてくれました。

後藤裕明先生の話に耳を傾け小児がんを学ぶ子どもたち。

 

子どもたちに命の重さを伝える小児がん体験談

続いて登壇したのは、小児がんサバイバーの小川名優貴さん。小児がんに罹患し小学6年生から中学2年生までを過ごした同センターでの入院生活を振り返っていただきました。小川名さんの場合、初期症状は首のしこり、倦怠感、発熱だったといいます。サッカー少年だった小川名さんは、試合中も疲れやすくなり次第に学校を休みがちに。病院で検査を受けた結果、血液がんと判明。「治療は辛い、きつい、苦しい、気持ち悪い!それしか覚えていません!」。でもそれ以上に辛かったのは、入院中に出会った友人との永遠の別れだったと言います。

「親友だった男の子がいて、ある日病室に遊びに行ったらすごく不機嫌でした。僕は相手をするのが面倒になり、その日から病室に行かなくなったんです。しばらくして看護師さんに病室に行ってあげてと言われ訪ねてみると、彼のお母さんは泣き崩れ、親友の彼はもう亡くなっていました。後悔しましたね。あの日、なぜもっと言葉をかけて寄り添えなかったのかって。その後、別の友人も亡くなりました。今、その子たちの分まで生きたいと強く思っています」

辛い闘病を乗り越え命の重さを伝える小川名優貴さん。一言一言が熱く、重く心に響きます。

小川名さんは現在24歳。当時の闘病体験が自身に与えた影響について、「僕の場合、がんになって楽しい生活や夢が一旦すべて崩れてしまい、いいことなど何もありませんでした。でも、小児がんになったから子どもたちに命の大切さを伝えたくて小学校の教師になりました。そして、がんになったおかげで強い自分を手に入れました。生きたくても生きられない人はたくさんいます。だから、今自分が生きていることに感謝し、亡くなった人たちの分まで命を燃やしたい。生きていることだけで、僕は恵まれていると思うから」

小川名さんの軽妙でエネルギッシュな語り口に引き込まれ、じっと聞き入ったり、熱心にメモを取ったりする子のどもたちの姿も。目頭を熱くする保護者も見受けられました。

今できることを始める一歩に。レモネードスタンド体験

今回は、小児がん支援のための募金活動として、レモネードスタンド体験を実施。まず、レモネードスタンドの歴史を動画で振り返ります。その原点はアメリカ。自身の小児がん罹患を機に同病の子どもたちを救いたいと4歳の少女アレックスが自宅の庭でレモネードを売り、その売り上げを病院に寄付したのがレモネードスタンドの始まりです。自分が辛い状況でどうして他の人を助けようと思うのか。その質問に、「人生が酸っぱいレモンを与えたときは、甘いレモネードを作ればいい」と答えたアレックス。2004年8月、アレックスは他界しましたが、活動の輪は全米そして日本にも広がっています。子どもたちは、レモネードスタンドのバックグラウンドを知ったことで活動の意義を理解し、この体験に意欲を見せていました。

レモネード作りは6グルーブにわかれて行い、レモン原液、砂糖、水を混ぜるシンプルな作業なので小学生でも簡単。完成したら募金箱を持って家族やスタッフにレモネードを配り、代わりに模擬通貨を受け取り実際の活動の様子を体験。その後、各グループの代表者が感想を発表しました。「他校の友人がレモネードスタンドをやっていて、当時は活動の目的を知らずに飲んでいました。今日レモネードスタンドの始まりとやり方を知り、高校生の自分にできることを考えるきっかけになりました」。「小児がんは治って終わりではなく、その後の発達にも影響するので継続的な支援が必要。自分には病気を治すことはできないけれど、レモネードスタンドのボランティアに参加して、できることを行動に移していきたいです」等々、子ども心に支援の必要性を感じ立ったようで、ますます活動の輪が広がる可能性を感じました。

グループで協力して初めてのレモネード作りにトライ。みんなおいしくできました。

緊張しながら募金箱を持ってレモネードを配りました。レモネードスタンドは学校の文化祭、企業、地域のお祭りなどで開催されています。

小児がん、AYA世代のがん啓発・研究推進プロジェクト「レモネードスタンド」はNPO法人キャンサーネットジャパンで実施しております。詳細については、こちらをご覧ください。

気分はドクター!? 本物の医療器具を使って検査・手術を模擬体験

午後は先生方の指導のもと検査や手術を模擬体験。その準備知識として、同センター外科医長・小児がんセンター長の北河徳彦先生が、『“小児がん”はこうやって見つける!治す!』をテーマにレクチャーを行いました。小児がんを見つけるための検査は、「まずエコー検査を行い、さらに詳しい検査としてCTなどのレントゲンで体の中を映し出しがんのある場所を特定。次に、血液腫瘍内科でお腹を切りがんと疑われる細胞を取り出し、病理検査科の先生がその細胞を顕微鏡で見て病気が確定します」という、治療に至る検査の流れを紹介していただきました。

北河徳彦先生は、小児がんの検査映像を見ながら検査方法などを解説。

いよいよ、子どもたちが楽しみにしていた模擬体験へ。今回の体験は、(1)がんの細胞を顕微鏡で見てみよう(2)エコー検査を体験してみよう(3)模擬手術を体験しよう(4)内視鏡をのぞいてみようの4種類です。

(1)がんの細胞を顕微鏡で見てみよう

病理検査科の先生にご協力いただき、顕微鏡をのぞきながら様々ながんの細胞を観察し、がんの種類ごとに細胞の特徴を説明。「顕微鏡を両目で見るのが難しい!」という声も聞かれました。

先生の説明を受けながら初めて見るがん細胞に興味津々。

(2)エコー検査を体験してみよう

2人1組になり、検査を受ける人はベッドに腹部を出して横になり、検査を行う人はゼリーをつけたプローブをお腹に当て、モニターに映る心臓、肝臓、腎臓の様子を観察。「自分の心臓の動きをチェックして!心臓が動くことで全身に血液が送られるんだよ」という先生の説明に興味深く耳を傾けていました。

自分の臓器が動く様子を観察する新鮮体験。プローブの扱いは想像以上にスムーズでした。

(3)模擬手術を体験しよう

子どもたちは手術着に着替え、手術の傷口を縫い合わせる「縫合」を体験。針とピンセットを使い縫合する糸の結び方を教わる子どもたちの表情は真剣そのもの。さらに腹腔鏡手術の模擬体験では、モニターを見ながら内視鏡を操り、先端についたはさみでビーズをつかみ棒に刺していく作業にトライしました。

ガウン、帽子、手袋、マスクを着けて手術の準備は万端!?

器用にピンセットを操り、初めての「縫合」をクリア。「上手だね!」と先生からお墨付きが。

腹腔鏡を使いこなすのは至難の業。日々手術を行うドクターに尊敬のまなざしが向けられました。

(4)内視鏡をのぞいてみよう

用意されたのはお腹の中を模した箱。この箱の中には大腸のような細いトンネルがあり、上下左右に方向を変えるアングルノブを左手で操作し、右手でレンズがついた内視鏡の先を持ちモニターを見ながらトンネルの中に挿入、箱の中にあるシールを探します。

本物の内視鏡を扱える貴重な機会、曲がりくねったトンネルの中に内視鏡を挿入するのに悪戦苦闘。

すべてのプログラムを終えた子どもたちは、座学と体験を通して楽しく、正しく小児がんと向き合い、今できることを前向きに考える時間を過ごせたようです。笑顔で記念写真を撮り、全員に「参加証明書」が発行されました。

子どもたちと先生方、スタッフも交えて記念撮影。

支援の輪を広げるには、まず小児がんに興味を持ち病気を理解することが第一歩。本講座でそれぞれが感じたこと、できることを持ち帰り、学校、家庭、地域でレモネードスタンドなどの活動を広げてくれることを期待したいです。支援のバトンを手に会場を後にする子どもたちの背中が頼もしく見えました。

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イベントタイトル:神奈川県立こども医療センター 夏休み公開講座 もっと知ってほしい小児がんのこと~“小児がん”ってどんな病気?小児がん治療・支援を体験しよう!~

開催日時:2019年8月10日(土) 10:00-15:00
会場:神奈川県立こども医療センター 本館 2F 講堂
共催:神奈川県立こども医療センター / 認定NPO法人キャンサーネットジャパン
協賛:メディデータ・ソリューションズ株式会社
協力:メドライン・ジャパン合同会社
後援:神奈川県 / 横浜市医療局 / 若年性がん患者団体STAND UP!!
参加者:43名(小学生24名、中学生12名、高校生7名)
見学者:40名

【プログラム】
10:00-10:05 開会挨拶
町田 治郎 先生 神奈川県立こども医療センター 総長

10:05-10:35 授業 “小児がん”ってどんな病気?
後藤 裕明 先生 神奈川県立こども医療センター 副院長/血液・腫瘍科 部長

10:35-10:45 体験談 僕・私の“小児がん”

10:45-11:00 休憩 

11:00-11:50  レモネードスタンド体験
小児がん支援のレモネードスタンドを開催してみよう!
レモネードの作り方・スタンドの開催方法

11:50-12:05 授業 “小児がん”はこうやって見つける!治す!
北河 徳彦 先生 神奈川県立こども医療センター 外科部長/小児がんセンター長

12:05-13:15 休憩

13:15-15:00 技術体験
先生の指導で検査や手術を体験してみよう!
①がんの細胞を顕微鏡で見てみよう ②エコー検査を体験してみよう
③模擬手術を体験しよう ④内視鏡をのぞいてみよう

 

開催日 2019年8月10日(土)
開催時間 10:00~15:00
場所 神奈川県立こども医療センター 本館2F講堂
参加費 無料
募集人数 50人
共催 神奈川県立こども医療センター 認定NPO法人キャンサーネットジャパン
協賛 メディデータ・ソリューションズ株式会社
特別協賛 メドライン・ジャパン合同会社
後援 神奈川県/横浜市 医療局/若年性がん患者団体STAND UP!!